理事長の   独り言
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 前回この欄でお話して、あっという間に1年が過ぎてしまいました。
 園長を辞して1年、いろんな事が第三者的な視点で見えてきました。そんな中一番感じたことはコロナ後の変化でした。
 コロナ禍の中、たくさんの人が集まるのは感染リスクが高まるということで、たくさんのイベントや行事が中止や縮小になりました。そして昨年5月の自粛モード解禁ということになり、全てのものが以前の状態に戻るのかと思いましたが、3年間の間に気持ちや考え方も大きく変化したのか、いままでやってきたことを見直し、昔のような形から脱却した新しい形を提示することも増えたように感じます。例えば我々の業界では入学や卒業の式典には地域にいらっしゃる政治家や地域を盛り上げる人、また同業の世話になった方を招いて式を挙行していましたが、昨年の解禁後このあり方がなくなりました。時代の変化と言えば一言で済みますが、コロナの3年間がたった3年で大きく社会のあり方を変化させたように感じています。
 そんな中一番大きな変化はリモートの出現だと思います。人が多く集まる会議や講演、研修もみんなリモートになっています。私の知り合いで全国的に有名な障害児の研究者がいますが、その先生が言うには、「コロナ前の講演等では必ず現地に行かなくてはならず、月に5・6回全国を歩き回っていたが、コロナにより講演や研修会がリモートになり、とにかく現地に行かなくて済むし、行きかえりの時間を考えるとリモートというのは非常に助かる」と言ってました。自宅や職場にいたまま全国の依頼に応えられるのは楽でいいとも言ってました。本当にそう思います。
 しかし気になることもあります。私は今大学で授業をしていますが、コロナ禍ではリモートで授業をしました。私はもちろんの事、学生も自宅で授業を聞いているのですが、試験をしてみて感じたのですが、実はリモートでしゃべった事のほとんどが学生の頭に残っていませんでした。それは学生にとっては学校に来て授業を聞くという緊張感もなく、映っているのは顔だけですから、手元に教科書が開かれているかも疑問です。このことから改めて対面という重要性を感じました。人が人と対面する、向かい合うということで発生する何らかの緊張感や実感がない手段というのは、人が人としての存在感を感じなくなるように感じました。
 最近精神科の医者から対人恐怖症の症状を表す若者が増えていると聞きました。直接会わず、直接話さない生活の中で出来上がる人格に不安を感じました。コミュニケーション能力の低下があちこちで言われる中、その原因は人と直接接しなくて済む生活が生み出しているように感じます。これを時代の変化として許していいものでしょうか・・・・・・。私にははなはだ疑問です。
 便利、効率的、IT化、AI化を目指すことで何が生まれてくるのでしょうか。私は不安です。
 このように言うと昭和の時代は遠の昔に過ぎ去った時代です。いつまで昭和の時代に浸っているのですかと言われそうですが、人間の生き方、生活の仕方、人間社会の作り方を考えると、昭和の考え方に学ぶ部分もあるのではと感じています。

次にいつこの欄でお話しできるかわかりませんが、その時までゆっくりゆっくりお待ちください。

理事長 今川元治