ずるずると延びていますが、しつこくテレビの話です。
 今月はテレビゲームの続きです。

 ゲームにおけるバーチャル世界と現実世界の切り替えがうまくいかなくなると前回でお話しました。
 このバーチャル世界(仮想・空想世界)というものは子どもの育ちにとっては自分の将来への計画を立てる上で必要なもので、昔から「夢多き子」と良い意味で表現されてきました。
 子どもの夢多き発想はすばらしいもので、現実感に包み込まれて生きている大人にとっては不可能な能力といえます。
 歴史的に見ても、こういった子どもの頃からの夢を実現させようと頑張って成功を収めた人もいっぱいいます。最近の子どもたちは昔に比べ非常に現実的思考をする子も多く、私からすればもっと夢を見ろ、夢を語れ、と感じていますから、バーチャル世界を否定するつもりはありません。
 しかし、問題にすべきは中身です。
 未来や科学、大きくなっての生活や仕事を夢見ることは必要と感じますが、勝ち負けや強さのみを夢見ることが中心となってしまうと話は別です。
 最近のテレビゲームの主流は格闘だそうで、昔のゲームの主流であったメルヘン的なものはほとんど受けないと聞きます。格闘ケームの本流は殺戮と破壊です。この世界観の中で何かを作り出したり守りあったりという事は全くと言っていいほど出てきません。こういった世界の中から発想する未来や夢は、当然のように戦いであり、ある種わがまま・虚栄心といわれる手前勝手のものでしかありません。
 ただ人間の本質に強さへのあこがれや支配する満足感という欲求がありますから、こういったゲームをすることでそういった本能的欲求が、現実とバーチャルの境を見えなくしてしまう恐れは多聞にあります。昔はこの欲求を現実の喧嘩やプロレスごっこ等で発揮し、この中で実際の痛みや攻撃の限界を学んだものですが、ゲームには痛みも限界もないので、夢から覚めない状態を作り出す危険性もあります。
 相手の痛みがわからない人間の思い描くバーチャルほど怖いものはありません。
 今お子さんがどんなゲームして楽しんでいるのか、ご存知ですか?
 ゲームの内容にちょっと興味を示してください。
 たかがゲームされどゲームです。

 テレビゲームのもう一つの問題点をお話しましょう。
 実はゲームに使ってある色彩は通常のテレビ番組に比べ非常に多くの色を使っています。
 特に脳に大きな刺激を与える赤や黄色・青・銀等が意識的に多く使ってあります。
 これらの色は脳への刺激が強く、気分的な興奮状態を作りだす能力があり、ゲームの内容だけでなく視覚的にも興奮するよう作られています。
 よって短時間でも大きな刺激を脳に与えることとなり、一般のテレビ視聴以上に脳が疲労します。
 さらにゲームの場合は、テレビ画面からやっている人間の目までの距離が短く(テレビに近寄っている状態)、視神経に与える疲労は通常の数倍にもなります。特にテレビの画面が大きくなればなるほど刺激量が増え、それに比例して脳の疲労は増大します。
 当然この疲労を何かの形でとらないと神経過敏状態は治まらないのですが、日々長い時間ゲームをし続けると疲労が慢性化し、俗に言う神経的に切れやすい状態を作り出します。(バックナンバーNo4を読んでください)
  最近の小・中学生が切れやすいという現実とそれが起こすいろんな事件に、大きく前記の内容がからんでいます。
 
 最近の子どもが何につけても「疲れる・疲れた」を連発しますが、その原因は肉体的疲労ではなく脳の疲労が原因です。 子どもがたいした運動もしないのに「疲れた」を連発する時は、脳が子どもの言葉を借りて悲鳴を上げていると感じてください。
 現代の子どもたちの精神疲労は、正直かなり深刻なレベルまで来ているように感じます。
 今一番子どもたちに必要なものは、テレビもゲームもしない、静かな時間そして家族との団欒です。
 
 テレビやテレビゲームを単純に排除しようとするのではなく、じょうずな付き合い方を改めて考えなくてはならない時期が来ているように感じます。
テレビの脅威 6

No.33 (04. 6)