発達障害の話も最後になりました。
 今回はこういった子にしないための子育てとはどのようなものかについてお話しましょう。
 
 発達障害の基本的原因については発達のアンバランスであると言いました。特に人間関係についての育ちの悪さが大きく影を落としています。
 この人間関係の育ちの悪さですが、実は非常に奥が深く、新生児の時の親との見つめ合いをスタートにどの年齢においての大人や同年齢の子のかかわり合いにも関係がありますし、生活様式においても大きな影響を受けるものでもあります。ところがこの人間関係の育ちというものを結構自然に育つと思ってらっしゃる方も多く、会話さえあれば、子どもが言うことを聞いてくれる限り、特に人間関係を構築しようと何かの手を打たれる方は少ないように感じます。
 また年齢的にも小学校に行ってからでないとおかしさを露呈することが少ないので、学齢前は特にないがしろにされている場合が多いように感じます。
 しかし症状が出てから対処しようとすると大変で、相当の時間と労力を必要とします。一番大切なことはそうならない子に育て上げることでしょう。
 
ではどのように・・・・・・。
 いくつかの課題があります。
 1.子どもと会話をしましょう。
 2.子どもが家族の一員であるという感触を感じさせましょう。
 3.家庭内にきちんとしたルールを設定し、きちんと守れるよう働きかけましょう。
 4.がまんが出来るようにしましょう。
 5.甘えたい時にしっかり甘えさせましょう。
 6.想像力を育ててあげましょう。
 7.約束事やルールが守れた時にしっかりと認めてあげましょう。
 8.しっかりしゃべれる団欒をつくりましょう。

 以上の8つがキーワードです。
 会話は、同じ話題を共有するということで、単に言葉をぶつけることではありません。一つの話題で子どもと話すことで子どもの感覚もわかりますし、親はどんな風に考えるのかということも子どもに伝わります。子どもの遊びや思考に親が積極的に介入しましょう。そしてその手段の最初の扉が子どもに対する問いかけです。
 子どもは家庭内の役割を与えられることにより、その活動が全体の家庭の流れをスムーズにさせることになるということを知ることで初めて自分がみんなの為に役立っているという満足感を感じ、さらには他の家族の存在を認識出来るようになります。
 ルールは集団で生活する為には欠くことの出来ないもので、みんなが守りあうことで安定した集団生活が出来るということを体験させる必要があります。次のがまんにも言えることなのですが、子どもが家族の中心になってしまうと何でもわがままが通ってしまい、傲慢でワンマンな性格を作り上げることになります。ここで大切なことは家での政策決定者という者の設定と、親自らがそのルールを守って見せるということです。ここで親の行動が適当であった場合は何の役にも立ちませんよ。
 低年齢時期は当然ですが、結構大きくなっても何か不安なことや寂しいことがあった時等ベタベタと親にまつわる事があります。その時にもう大きくなったんだからと突き放すと大きなダメージを与えてしまいます。いくつになっても甘えたい時に甘えさせてやることが必要です。
 最近の子はテレビを常に見ているので頭の中で絵柄を想像することや人の話をしっかりと聞くことが苦手です。
 これは完全にテレビ生活の結果で、学校でも先生の話が聞き取れない(聞いている内容で相手が何を話そうとしているか理解できない)子がたくさんいます。これは幼児期の本や紙芝居の読み聞かせが不足すると顕著に表れます。
 想像力とは単なる夢を描くことだけではなく、聞いた話を頭の中で絵柄として認識する能力でもあるのです。
 やることをやった時に認めるということは、結構「しています」というお話を聞くことは多いです。でもよく見るとそれは何かお願い事や何らかの指示を出した時の結果として認めてらっしゃるだけで、通常の生活の中にパターンとして組み込まれてしまうとほとんどされていません。先のルールしかり、学校の宿題しかり、やって当然でわざわざ評価する対象ではないという気持ちかほとんど認めてらっしゃいません。
 決まった事やノルマと言えども子どもにとっては大変な思いでやってる訳ですから、小さなことでもしっかりとやったことを認めてあげてください。
 最後に団欒ですが、団欒は家族の健康状態、各自の現状確認、意識交流による相互理解、親等からの知識の伝達、子どもから親への情報公開等々たくさんのメリットがあり、家庭生活の中で一番大切にしなくてはならないものです。
 ところが最近はテレビを見ながらの団欒・食事が増え、前記のメリットがほとんどない状態になってしまっています。子どもの将来、家庭の将来を大切にそして重要に考えられるのなら、テレビを家庭の主役から降ろしましょう。
 私はいろんな場所での講演で、このテレビと団欒についてお話をして来ました。そんな中「我が家ではついに食事の時間にテレビを消しました」というお返事を多く聞きました。そしてそのほとんどの家庭で「子どもを含めみんなの状況がわかり感じられるようになり、みんなの話題で笑いが多くなり、何でも話せる家族関係が出来つつあります」とのお言葉を頂きました。
 テレビは現代生活において欠く事の出来ないものではあります。しかしテレビは家族や人間関係を壊してしまい、ひいては子どもの育ちまで狂わせてしまう非常に大きな力を持った機械であることも知っておく必要があると思います。

 発達障害というのは後天的に作られた障害です。そしてそれを作っているのは家族でありテレビだと思っています。
 改めて現生活を見直して、大切な我が子にとって我が家がベストな環境かどうか再点検が必要なのではないでしょうか。
 
発達障害 3

No.27 (03.12)