12月より、子ども自らが育つ力を養うために必要な環境についてお話をしています。
今回は「人的環境」です。
人的環境とは当然子どもにかかわる人のことです。
それは親であったり、兄弟であったり、祖父母であったり、先生であったりと、子どもにかかわる全ての人のことをいいます。
このかかわる人の重要性についてはここで改めて力説しなくてもご存知でしょうから、あまり云われない質的な分野についてお話しましょう。

 子どもが育つ環境の中で、自分の世話をしてくれる人間の存在ほど必要なものはありません。
それは人間という動物が生まれながらに生活能力を持たないで生まれてくるからです。
他の動物は生まれて1日もたてば親と同等の機能を持って同じ生活が出来ますが、人間にはそういう能力はないのです。他の動物にはない完全依存の状態で生まれてくるのが人間なのです。
よって子どもは人間が作る人間の生活の中で人間として育っていくのです。
でも人間なんだからどんな環境の中であっても人間にしかならないという意見も聞こえますが、それは単に生物学的な思考でしかありません。昔狼に育てられた少年が発見されました。育てていたのは狼です。その子は発見時10歳程度になっていたようですが、歩くときは四つ這い、食事も手を使わず、もちろん言葉なんかはまったくしゃべれず、単に吼えるだけだったようです。発見後懸命に人間となる為の指導が行われたようですが、結局手で物をつかんで口に持っていくという行為が出来るようになっただけで、二本足で歩くことや、言葉を使っての会話は出来ませんでした。
ここまで極端な話でなくとも、小さい頃から座敷牢のようなところで育てられたという子の情報は、全国あちこちで聞きます。そしてその子たちのほとんどが歩行も出来ず言葉もしゃべれない子でした。
このことから言えることは、人間が育てないと人間として生まれても人間にはなれないということです。
では子どもを人間社会の中に置くだけで全てOKなのでしょうか・・・・。
どのような子になってもかまわないのならそれでも良いのでしょうが、しっかりした人間(大人)に育てようと思ったらまだ必要なことがあります。
それは親(育てる人間)のしっかり育てようという意識と、しっかり育てるのに必要な知識です。
今私がここで書いている4つの環境を、どのような時に、どのように与えるのが適切なのかを十分理解した上で子どもを育てることが必要に感じています。
子ども自身の力では物・人・時間・空間の4つの環境を、獲得したり選んだりすることが出来ないということを知ることが大切です。
子どもは全て与えられる立場と物の中で生活をせざるを得ないのです。
よって大人(親も含め)は子どもの育ちや人間になっていく営みに対し、適切な環境を与える責任があるのです。
親や大人の自己中心的な意識・行動によって、子どもが育つという子どもが持っている権利を侵害してはならないのです。
今世間で多発している児童虐待も、結局は親や大人の自己中心的な意識と自分の欲求への甘えの上に成立していることを知らなければなりません。
親である以上、大人である以上、子どもに必要な環境を与える責任からは逃れられないことを知ってください。
子どもの育つ力と環境 3

No.20 (H15.2)